退会給付金に関する記事(産経新聞)

新聞記事

高裁の違法判決後も支給
大阪市を除く府内四十二市町村職員が加入する社団法人「大阪府市町村職員互助会」(事務局・大阪市、理事長・稲田順三和泉市長)が、〃ヤミ退職金"との指摘もある退会給付金を、大阪高裁から支出を「違法」とされ一部返還を命じられた後の平成十六年度予算で、百二十七億八千万円の支給を見込んでいることが、十四日分かった。高裁判決を事実上無視した形。退会給付金は多額の自治体補助金を主な財源として退職者に支給され、十五年度分だけでも、同互助会は退職者三千五百十五人を対象に計百二十六億四千万の退会給付金を、高裁判決直後に支給していた。
同互助会や高裁判決などによると、退会給付金は、給与日額の四百日分を五百六十五万円の上限で支給する制度。平均支給額でも三百六十万円前金への公費補助は違法」などと同互助会などを相手に提訴。一審の大阪地裁判決(九年十月)は請求を棄却したが、二審の大阪高裁判決(昨年二月)は「実質的には地方公共団体が退職金の上乗せを図っていると言わざるをえず、地方自治法上、補給金の支出は違法」として、地裁判決を変更。公費補助の一部約七千二百万円を吹田市に返還するよう互助会に命じた。
高裁判決は「退会給付金は、会員が会費として支払った額をはるかに超える。退職金とは別に高額の退会給付金を支給するのは、職員の厚生制度として本来的なものといえない」と指摘、事実上のヤミ退職金と認定した。
互助会側は上告する一方、「高裁判決とは直接関係ない」としながら、十六年度から職員の会費総額に近づけ二百八十二万円を上限とする「退会せんべつ餓別金」を新たに創設。
しかし現職員については経過措置として従来の制度に基づき、十六年四-七月は三千五百十五人に
計百二十六億二千四百万円の退会給付金を支給。十七年四ー七月にも、約百二十七億八千万円を支給する予算を組んだ。十七年度以降については、毎年12.5%ずつ四年間、退会給付金支給額
を削減し二十年度には半分程度の水準に引き下げる方針。職員の会費と公費の補給金の負担割合を十六年度の一対一・六四から、十八年度には一対一に見直すとしている。

三千五百十五人もの市町村職員の退職者たちは、大阪高裁が「違法」と指摘した後も、自分で支払った会費総額を大幅に上回る一人当たり約三百六十万円、総額百二十六億円もの〃ヤミ退職金"を受け取っていた。大阪府市町村職員互助会の高額退会給付金問題。財源の大半は市町村が支出した公費だ。漫然と続く職員厚遇に、ある首長は「『赤信号、皆で渡れば…』という面があった」と話す。
「判決はいつになりそうですか」。高裁判決を不服として上告した裁判の行方について、同互助会には、府内だけでなく、全国の自治体かそんな間い合わせが絶えないという。
一部とはいえ、退会給付金に支出した公費補給金の返還を求めた判決が最高裁で確定すれば、「あちこちから返還請求が相次ぎ、互助会は大変なことになる可能性が高い」と関係者はいう。
確かに、互助会側がよりどころにする地方公務員法四二条には「地方公共団体は職員の保険、元気回復その他厚生に関する事項について計画を樹立し、これを実施しなければならない」と規定されている。
しかし、これは互助会に対する公費補助を義務付けているわけではない。法律で負担割合が定められている共済組合などとは、根本的に異なっている。財政危機宣言を出した宮城県では平成十三年度から、公費補助金を全廃したうえで、人間ドックなど健康管理の助成に限り共済に補助すようになった。また一連の職員厚遇批判が噴出した大阪市も、公費補助の原則廃止を打ち出している。
府市町村職員互助会の退会給付金は祝金や見舞金、医療補助などを含めた給付事業費全体の八
割以上を占める目玉事業だ。同互助会の幹部は「地域で知恵を出して苦労して作ってきた制度」
と述べる。そのうえで「うちは退会給付金にウエートを置いてきたために、それが残って批判されている。しかし、単年度でデジカメや制服だと支出していれば、返還の必要はないというのか。残してきたところが悪者になって、毎年食ってきたところは批判されないのは疑問だ」とも語った。
大阪府市町村職員互助会理事長、稲田順三和泉市長との一問一答は次の通り。
-高裁から一部「違法」と判断された退会給付金の支出を現在も続けているのをどう考えるか
「最高裁でまだ判決が出ていない。その決着がどうなるかわかりにくいので、今のところそういう形で対応している」
−判決についてどう考えているのか
「大阪地裁の判決では全面勝訴している。大阪高裁では一部敗訴ということになった。地方公務員法四二条では福利厚生が認められている。事業主としてもしっかりやらなくてはならない。ただその割合がどうなのかという点が間題。最高裁の判断を待ちたい」
−冨城県、大阪市は互助会への公費支出を廃止し、必要な事業に支出していくという方針を打ち出しているが
「過去の歴史的な経過がある。違法というなら別だが、やはり地公法四二条がある。どこにウエートを置くかは別に、職員の福利厚生、元気回復のために互助会がある。四十二市町村、百二十六事業主が加入しており、急激に変化させるわけにはいかない。職員のことも考えながらやっていかなくては」
−公費負担を今後、どう見直すか
「平成十七年九月の役員改選までに、被保険者と公費の負担割合を一対一に決めようと理事会などでお願いし、意思決定されたと考えている。一対一とすれば当然、退会給付金にも手をつけなくてはならないだろう。十九年度以降については未定だが、社会、経済情勢を見ながら、しっかりした考え方を持ってやりたい」