槇尾川ダム事業継続へ

12月6日の再評価委員会で事業継続が事実上決定しました。
今回の再評価のダム部会を傍聴して、再評価であっても始まった事業を変更することが極めて難しいことを実感しました。
今回の再評価のポイントはダム+河川改修と河川改修のみ(掘削)の方案比較でした。
結局治水効果が発揮するまでの期間(ダム+河川改修で10年、河川改修のみで20年)の差でダム案が採択されました。

河川改修のみの方式が20年もかかるのは、現計画の50mm対応の河川改修が終わった後にしかダム代替の河川改修(大川橋から上流部の改修)ができないことを理由に20年かかると大阪府は主張しました。
この議論は全く理解できないものです。ダム部会でも委員から度々なぜ20年かかるのかとの質問が出ましたが、私から言わせばつっこみが不十分で大阪府の言い逃れを許してしまいました。
河川改修は”下流部から順次上流部に展開することが原則である”ことが根拠になっていますが、このように工期が問題になる場合は全く別の場所の工事であり、同時並行は十分可能なはずです。
大阪府はこの説明に次のようなことを言っていました。

上流の流下能力を上げるとそれに下流が対応していない場合はそこがボトルネックで氾濫が起こる。従って下流から順次上流に実施すべきである。
このことは何を言っているのでしょうか。
上流の流下能力を上げることで下流に大量の水が流れる。従って流下能力を上げ得ない。
何のことはない”そこで溢れさせて下流まで流さない”と言っているに等しいのです。
このような議論が成り立つはずはありません。
さらに上流の河川改修での流下能力の向上は100年確率の降雨の場合でも最大毎秒70トン程度です。下流に対し決定的に影響を及ぼすレベルではありません。
どこから工事を行うかは流下能力が相対的に不足しているところから行うべきです。
上流部は現実に被害が出ているのですから、ダムなし河川改修の場合はむしろ上流を優先した改修がなされなければなりません。
そうすれば河川改修のみでも治水効果の発揮時期は大きく変わるはずがありません。

このような簡単なことが賢明な委員諸氏に理解できないはずがありません。
これが私が最初に言った決まったことを覆すことの困難さです。
環境に不可逆的なダメージを与えるダムは最後の手段です。淀川流域委員会のような議論がなぜこの再評価でなされなかったのか残念でなりません。

今回の再評価の結論で大阪府は我が意を得たりと思っていることでしょう。
ダムの工事は平成20年からです。まだ時間はあります。引き続き見直しの活動を続けます。